未来への展望

―工学系の立場から期待すること―

東京工業大学 大竹尚登
       東京工業大学
       大竹尚登

 一般社団法人大田医療産業機構の設立に際し、新産業創出の日米比較を通じて、工学系の立場から本機構に期待することを述べる。
 米国における1995年以降創業のスタートアップ企業のTop10社(Teslaなど)の価値は約105兆円(藤原 洋氏講演資料より2014年1月現在の額)である。これに対して、トヨタ、ソフトバンクと続く日本全体のTop10の価値は約89兆円と、驚いたことに米国の新興10社の価値を下回っている。何故米国はこれら錚々たるベンチャーを生むことが出来たのだろうか。サンディエゴを例にとれば、軍に依存していた経済が、1989年の冷戦終結で一気に冷え込み、地域経済を発展させる新たな産業の柱を構築する必要があった。そこで、地元の産官学が一体となって薬品や医療、ICT関連のベンチャーを育成し、それらのベンチャーが今のサンディエゴを豊かな都市にしている。日本ではどうか。カリフォルニアと同様に、スタートアップの期待できる技術集積地の一つが、大田区であろう。実際に、大正から昭和にかけて大田区で生まれた世界的大企業は数多くあったが、最近はみられない。これは時代の趨勢が、大田区が得意とするハードからICTを基本としたソフトの業種に傾いていることと、サンディエゴの例のとおり、一つのアイディアを個人が長時間を掛けて成長させてゆく形態から、産官学が一体となって短時間に育成する形態に変化しているためである。だからこそ、本機構の役割は大きい。サンディエゴと同様に、大田区で生まれるユニークなアイディアを、皆で具現化してゆく組織なのだ。出口の一つが医療用機器である。医療用機器は、承認・認証と販売経路の開拓に難所が有り、本機構がそれらを担うことこそが、大田発の医療機器が飛翔するためのキーポイントになるだろう。もう1点本機構に期待したいのは、広く大田区の新産業の芽を産官学が一体となって育成することである。創業70年、三代目の社長が、新事業に参入しようとした際、それを外から見ているのではなく、「これは素晴らしい」という技術であれば皆で伸ばして行った方が地域経済へのプラスは大きい。技術を伸ばす際に、大田区が得意とするハードにICTを組み入れ融合させる場の形成も必要だろう。こういった役割を本機構に期待する。そして大田区に限らず「ひらめきと新技術を産業に」に共鳴する近隣の市区・大学とも連携して日本産業を底上げする未来を、理事として共に描いてゆきたい。

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